以前別の会員が行って撮影した写真が印象的だったため、行ってみることにした。最近ちょっと人気の山らしい。この山のシンボル的存在は「孤高のブナ」だそうだ。そこまで行って戻るだけなら日帰り可能なようだが、沢入山(そうりやま)まで足を伸ばすことと、あまり馴染みの無い方面ということもあり、余裕をもって前夜発とした。
前夜、大畑無料駐車場に着くと他に車は無く、満天の星空の下、静かな夜を過ごせた。トイレもあり、きれいに管理されていた。翌朝、車で数分の銅親水公園駐車場に着くと車が10台以上停まっていた。やはり昨夜の駐車場は正解だった。
ゲートを越えて進み、左に見える橋を渡ってさらに松木沢方面のルートを右に分けて左の仁田元川沿いを目指す。川岸近くに白い点々がたくさん見えていたが、行ってみると植樹された一本一本の木につけられたプレートで、地元の小学生が今月植えたばかりのものだった。
平坦な道を進むこと1時間で中倉山登山口となった。ここからくすんだ紅葉の雑木林の中、ジグザグと上がっていく。標高約1300mの尾根までひとがんばりすると展望が開け、傾斜も緩む。地面には小笹が緑を添える。
登っていたら、木の幹にセミの抜け殻がたくさんついているのを発見した。どれもが山の斜面下側の樹肌に頭を上に向けて一列に並んでいる。山から吹き下ろす風をよけるためだろうか。しかもほとんどの抜け殻は、樹皮に割れ目のあるナラかカシワかの樹についている。セミもホールドやスタンスがしっかりある所がしがみつきやすいのだろう。それでも、たまーにつるんとした樹に一匹見つけることがあって、これは上級者(セミ)もしくは独立独歩を好む変わり者で一人(匹)頑張ったんだなぁと感心した。
中倉山直下でルートが分かれ、メンバーの1人は右からなだらかに登るルートを、2人は左の直登ルートを選んだ。後者のルートでは途中、赤黄に色づいた樹木が大岩に寄り添うちょっとした展望台があった。ここから左にトラバースルートが分岐していたが、山頂へは直登する。3人合流して台地状の中倉山山頂1499mへ。右に松木沢を挟んで男体山が大きく見えるが、頂上には雲がかかっていた。そして山頂の先の鞍部にぽつんとある一本のブナを見下ろせた。かっこいい。これが「孤高のブナ」か。周りはロープで囲われ、近づいて直接触れることはできなかった(コロナ感染予防なのだろうか?)。
時期的には多少遅いものの、左の山肌は紅葉のパッチワークとなっていたが、青空でなかったのが残念。天気が崩れてきて多少雨粒を感じるようになったが大したことはなかった。行く手に見える山の稜線は、右側ははげた露岩の急斜面で、左は緑の絨毯敷きで白樺林の緩斜面になっていた。登山道はその縁を這い上がっていた。頂上に枯れ木1本の波平ピークを越え、沢入山1704mまで約1時間。頂上の先には、またのびやかな緑地が広がっていて、その奥に整った三角形の皇海山がよく見えた。
小休止の後、スタート地点を目指して戻るが、波平ピークを下りたら分岐右のトラバースルートで先の大岩展望地点まで行く。ここからは登ったルートを下山。帰りの林道では秋晴れとなった。また一つ良い山行ができた。
資料を見ると沢入山からさらに庚申山まで登山道がつながり、途中に幕営できそうないいところもあるので今度は春に山中一泊で歩いてみたい。